元気はつらつ肝炎教室 −肝臓にやさしい食事ー
講師 加藤章信 先生(岩手医科大学第一内科助教授)

平成16年3月12日 保険センター

要旨
〔T〕肝臓について
1. 肝臓の位置と形・・・図を用いてわかりやすく示す。
2.肝臓の働き
・糖・蛋白・脂肪を体に取り込みやすいように変えること(代謝)
・ビリルビンの合成
・解毒や排泄の機能(薬物・アルコール・ホルモンの代謝)
3.肝臓病の進行について
急性肝炎→慢性肝炎→肝硬変
4.肝硬変症とは?
     肝臓に線維が多くなり正常に機能しなくなったもの(硬くなった状態)
5.肝硬変にみられる症状・身体所見について
6.肝硬変の重症度について
7.肝炎の予後について
〔U〕日常生活の一般的な注意点
   1.お酒・・・基本的には、勧められないが肝臓の状態によっては、厳密に制限してはいない。
2. 服薬・・・@肝臓の働きが鈍くなっているため薬の代謝が落ちる。
       A効き目が長く血中薬物濃度が高くなる。
       B副作用が出やすい。
3. 風呂・・・@熱い風呂、長風呂を避ける。
       A食後、1時間は避ける。
4. 旅行・・・@長旅は避ける。
       A時間にゆとりを持って行動する。
5. 仕事・・・疲れをためないようにする。
6. 睡眠・・・@休養の時間はしっかりと確保する。
       A眠れなくても横になる。

〔V〕肝硬変の栄養代謝異常について

   1.肝硬変の方は、栄養代謝異常がおこりやすい。
   2.肝硬変で、エネルギー代謝・蛋白代謝ともに『異常』の人は50%である。
   3.栄養障害型は以下の二つであり、肝硬変患者の約8割に栄養障害がある。
・蛋白栄養障害型
・蛋白・エネルギー障害型
   4.栄養状態が、予後に大きく関わっている。
   

〔W〕肝臓の栄養基準

1. エネルギー必要量
     30〜35kcal/s/日   ex)60sの人→1800kcal
     ※糖尿病のある方は25〜30kcal/s/日
2.蛋白必要量
・ 蛋白不耐性がない場合:1.0〜1.5g/s/日
(蛋白がきちんと処理できない場合)
・ 蛋白不耐性がある場合:低蛋白食、経腸栄養剤の活用
  3.分割食
肝硬変症では肝臓の働きが低下しているため、代謝可能なエネルギーしか摂取できない。そのため、夜間のエネルギーが不足しがちであるため『分割食』を取り入れることが望ましい。ただし、肥満や糖尿病疾患の人は注意が必要。
※ 1日4〜6回が適切だが、年齢・ライフスタイルを考慮することが必要
※ 夜間、200kcal程度の間食が良い。(図を用いてメニューの紹介)

〔X〕分岐鎖アミノ酸について(BCAA)   薬品名:アミノレバン
   内 容:イソロイシン、ロイシン、バリンの3つの必須アミノ酸(蛋白質)
   働 き:@アンモニアの処理
Aエネルギーの合成
B低タンパク血漿・低栄養状態の改善 など
   形 態:@顆 粒・・・・アミノ酸のみの構成
       A経腸栄養剤・・アミノ酸+必要な栄養成分が調合されたもの
 ※肝硬変患者の中には、食事療法のみより、食事療法+分岐鎖アミノ酸の補充療法が有用。食事療法のみより、肝不全になる確率が減少する。 

〔Y〕食事のヒント
@ 食事は3食、規則正しく、バランスのとれた食事内容にする。
A 季節ごとのさまざまな食材を使う。
B 動物性・食物性の両方の蛋白質をバランス良く使う。
C 青魚に含まれる(EPA、DHA)脂肪を多く摂取する。
D 緑黄色野菜を取る。




〔事前質問内容と回答〕
Q1 肝臓の状態がどの程度悪くなると、体調に変化が現れるものなのか?
A1  はっきりとした区切りはないが、専門的にいうと『非代償性の肝炎』という状態になれば症状が顕著になる。

Q2 インターフェロン治療以外にどのような方法があるのか?
A2 ・基本的に飲み薬は、B型C型とも同じ薬物での治療。
   ・注射(強ミノファーゲン)も、B型C型ともに有効である。
   ・B型肝炎には、肝炎ウィルスを減少させる『ゼウィックス』という薬がある。
   ・C型肝炎は、薬物療法のみではウィルス減少は期待できない。
   ・現在注目されているC型肝炎の治療法は、レベトール+インターフェロン療法、瀉血療法(鉄が過剰で、肝機能異常を認める方が対象)である。

Q3 長い間、治療法が変化しないが効果はあるのか?
A3  今の治療によって、肝機能を維持しているため中断せず、継続することが大切である。

Q4 アルコールは絶対に飲んではいけないのか?
A4  基本的には、アルコールは控えたほうが望ましい。しかしそれがストレスになると逆効果なため、病気の状態をみながら指導させていただいている。

Q5 血圧や心臓の薬を飲んでいるが肝臓の状態が悪くなったとき、さらに薬を飲んでも良いものなのか?
A5 処方された薬は、医師や薬剤師が必要とみなしたもので他の薬と一緒に服用しても構わないものである。必要最低限の薬は飲み、それ以外は飲まないことが重要。併せて、病院を変えるときには医師に服用している薬を報告することが大切。

Q6 家族への感染予防で気をつけることは?
A6 血液の取り扱いに注意すれば、普通に生活して良い。

Q7 日常の生活に何か配慮は必要か?
A7 肝臓に負担がかからない運動強度について
  ・肝機能の値(GOT,GPT)に問題がなければ、制限なし。
  ・肝硬変の人・・・話しながらできる運動(運動強度にすると60%程度)

Q8 肝炎のその後の経過について知りたい。
A8 B型肝炎・・・肝炎ウィルスに感染した人の9割は、治療しなくても自然に軽快する。
   C型肝炎・・・30%は、悪化しない。30%は観察が必要。30%は積極的な治療が必要となる。
いずれにしろ自分が今、どこの段階にいるのかを把握することは大切であるため、定期的な病院受診が重要となる。

〔講演会での質問内容と回答〕
Q1 肝硬変になりかけているが、講演会でも話があった分岐鎖アミノ酸(アミノレバン)は市販されているのか?
A1 市販はされておらず、病院で処方されるもの。

Q2 普段の生活はB型、C型とも同じところに注意していってよいのか?
A2 血液に注意していただくところは一緒である。ただし、B型は進行が早い場合があるため観察が特に重要。

Q3 肝硬変の手術を受けたが、胆のうも一緒に切除した。胆管が広がっていると言われたが、それはどういうことか?また、日常生活で自分が注意すべきところを教えてほしい。
A3 手術の結果、傷の周辺にひずみができ、胆汁の流れが淀んでいる可能性と新たに、しこりができている可能性の二つが考えられる。今後も定期的な観察が不可欠。